その小学校には古い木造校舎があって、でも古いので安全性がどうとかで私の在学中には校舎として使われなくなった。
卒業から数年後、木造校舎は建て替えられて、講堂だけが残された。
外からも見えるけれど、講堂としては使われていないそれは傍から見ると保存されているのか朽ちていくに任されているのかわからないなと思う。
あるとき見るともなしに見ていてふと、
それをそのまま残そうとしてやっていることが、むしろそれを壊してしまう、ということもあるのかもしれないな、と思った。
その講堂云々というよりは、もう少し一般的なこととして。
そしてそれは、感情についても言えるのかもしれないな、と。
その感情を守りたくて、できる限りそのままにしておきたくて、でもそのために何かをしたことで、その感情自体が変質してしまうような。
そういう感覚が、すでに自分の中にあると、そのときには気づいていたわけね。